📘 処遇改善加算 完全ガイド

障害福祉サービス事業所向け|令和8年度版
令和8年6月施行の改正に完全対応

1処遇改善加算とは?

💡 ひとことで言うと
障害福祉サービス事業所の職員の給与を上げるために国が配る補助金
事業所が要件を満たすと、利用者1人あたりの基本報酬に「上乗せ」で加算が支払われます。

制度の目的

障害福祉の現場で働く職員の賃金水準を底上げし、人材確保・定着を図ることが目的です。2012年の制度開始以来、数度の改正を経て拡充されてきました。

仕組みの流れ

Step 1 事業所が要件を満たす
キャリアパス要件・職場環境等要件などをクリア
Step 2 計画書を作成・提出
毎年度4月15日までに都道府県等に提出
Step 3 毎月の報酬に加算される
基本報酬 × 加算率の金額が上乗せ
Step 4 受け取った加算を職員の賃金改善に使う
基本給UP・手当・賞与などで配分
Step 5 翌年度に実績報告
配分実績を都道府県に報告

対象となる職員

令和8年6月改正で対象が大幅拡大しました:

改正前 改正後(令和8年6月〜)
福祉・介護職員のみ 障害福祉従事者全般(看護職員・PT・OT・児発管・サビ管・世話人・生活支援員など全員)

2令和8年度の大改正ポイント

⚠️ 令和8年6月1日施行の臨時報酬改定
処遇改善加算が大幅に拡充されました。対象職員・加算率・要件のすべてが見直しです。

5つの重大変更

👥対象職員の拡大

福祉・介護職員のみ → 障害福祉従事者全般へ。看護師・PT・OT・サビ管など全員対象に。

💰賃上げ幅の拡大

月額最大1.9万円(6.3%)の賃上げを実現する加算率引上げ。定期昇給分含む。

新区分「ロ」の新設

加算Ⅰ・Ⅱに上位区分「イ」「ロ」を設置。生産性向上の取組事業所にはロで上乗せ。

📋要件の厳格化

キャリアパス要件Ⅳの基準が年収440万円→460万円に。職場環境等要件の項目数増加。

🆕対象サービス拡大

相談支援系(計画相談・障害児相談・地域相談)が新たに対象化

🛡️経過措置の用意

いきなり要件対応できない事業所向けに「令和8年度特例要件」で誓約パスを提供。

3加算区分の種類

共同生活援助(介護サービス包括型)の加算率

区分 4・5月 6月以降 特徴
加算Ⅰ 14.7% 最上位(旧)
加算Ⅰイ 16.3% 最上位・標準
加算Ⅰロ 16.9% 最上位・生産性向上
加算Ⅱ 14.4% 準上位(旧)
加算Ⅱイ 16.0% 準上位・標準
加算Ⅱロ 16.6% 準上位・生産性向上
加算Ⅲ 12.8% 14.4% 中位
加算Ⅳ 10.5% 12.1% 下位(計算基準)
💡 「ロ」と「イ」の違い
「ロ」は「イ」より加算率が高いですが、追加で生産性向上要件の達成が必要。中小事業所にはハードルが高いため、「イ」で十分というケースが多いです。

加算区分の選び方(判断フロー)

Q1. キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ 全て満たせる?
YES → 加算Ⅰイ(またはⅠロ)
NO → Q2へ
Q2. キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ 満たせる?
YES → 加算Ⅱイ(またはⅡロ)
NO → Q3へ
Q3. キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ 満たせる?
YES → 加算Ⅲ
NO → 加算Ⅳ(最低ライン)

4要件の全体像

処遇改善加算を取るには、以下の要件をクリアする必要があります。

5つの要件パッケージ

① 月額賃金改善要件

全加算共通。加算Ⅳ相当額の1/2以上を基本給or毎月手当で改善。

② キャリアパス要件Ⅰ

職位・賃金体系の整備。2階級以上の職位と対応する給与表を明文化。

③ キャリアパス要件Ⅱ

研修の実施・支援。研修計画・資格取得支援を整備。

④ キャリアパス要件Ⅲ

昇給の仕組み。経験・資格・評価による昇給制度を明文化。

⑤ キャリアパス要件Ⅳ

改善後年収460万円以上の職員を1名以上配置(または職場環境等要件14以上で代替)。

⑥ キャリアパス要件Ⅴ(加算Ⅰのみ)

特定事業所加算Ⅰ・Ⅱを取得していること。

⑦ 職場環境等要件

6区分から合計14項目以上の取組を実施(加算Ⅰ・Ⅱの場合)。

⑧ 見える化要件

実施する取組をHP等で公表(加算Ⅰ・Ⅱ必須)。

加算区分ごとに必要な要件

要件 Ⅰイ Ⅰロ Ⅱイ Ⅱロ
① 月額賃金改善
② キャリアパスⅠ
③ キャリアパスⅡ
④ キャリアパスⅢ
⑤ キャリアパスⅣ
⑥ キャリアパスⅤ
⑦ 職場環境等(14以上) 8項目8項目
⑧ 見える化
⑨ 令和8年度特例要件(Ⅱロ相当1/2)

5キャリアパス要件の詳細

キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)

📋 3つすべてが必要
  • 職位の定義:直接処遇職員に2階級以上の職位(初級→中級→上級など)
  • 賃金体系:各職位に対応する給与基準を明示
  • 周知:就業規則等に明文化して全職員に周知

具体例

職位 対応職種 基本給
上級 サービス管理責任者・管理者 時給2,500円〜
中級 リーダー世話人(5年以上) 時給1,400円〜
初級 世話人・生活支援員 時給1,250円〜

キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施・支援)

📋 3つすべてが必要
  • 研修実施:社内/外部研修、OJT、能力評価のいずれか
  • 研修支援:資格取得費用の補助、研修受講のための勤務調整
  • 周知:全職員への周知

キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)

📋 次のいずれかの昇給基準を明文化
  • 経験基準:勤続年数で昇給(例:勤続3年で+50円)
  • 資格基準:資格取得で昇給(例:介護福祉士で+100円)
  • 評価基準:人事評価で昇給(判定時期を明示)

キャリアパス要件Ⅳ(年収460万円以上の配置)

⚠️ 2択
  • 原則:改善後年収460万円以上の経験・技能職員を1名以上配置
  • 代替:満たせない場合、職場環境等要件14項目以上を実施することで代替
💡 小規模事業所の例外
小規模(定員20名未満)等の事情がある場合、「配置人数ゼロ」でも職場環境等要件の代替で要件クリア可能。

キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)

加算Ⅰ(Ⅰイ・Ⅰロ)のみで必要。特定事業所加算Ⅰ または Ⅱ を取得していることが条件。

6月額賃金改善要件

🔴 ここが最重要!
加算Ⅰ〜Ⅳのどれを取得しても、加算Ⅳ相当額の1/2以上を「基本給」または「毎月支払う手当」で改善することが必須。

ルール

対象 可否 理由
基本給UP ✅ OK 基本給そのものの引き上げ
毎月の定額手当(処遇改善手当・資格手当など) ✅ OK 毎月決まって支払う手当
賞与・一時金 ❌ NG 毎月ではない
年度末特別手当 ❌ NG 変動的
残業手当 ❌ NG 変動的

計算例(共同生活援助・月額報酬1,416,000円の場合)

加算Ⅳ率(年平均)
12.1%
加算Ⅳ年間額
約201万
その1/2(基本給UP必要額)
約100万
円/年
月額換算
約8.4万
円/月
✨ 配分の考え方
この月約8.4万円を、事業所の全職員の基本給UPと毎月手当で配分します。
均等配分は不要。経験・技能のある職員に重点配分が推奨されます。

7職場環境等要件(28項目から選ぶ)

📋 選ぶルール(加算Ⅰ・Ⅱの場合)
  • 6区分それぞれから最低必要数を選択
  • 全体で14項目以上実施
  • 実施していれば「✓」、令和8年度中に実施予定なら「誓約」でチェック

6区分と選択基準

区分 加算Ⅰ・Ⅱ 加算Ⅲ・Ⅳ
(1) 入職促進2以上1以上
(2) 資質向上2以上1以上
(3) 両立支援・多様な働き方2以上1以上
(4) 腰痛・心身健康管理2以上1以上
(5) 生産性向上(⑱必須)3以上2以上
(6) やりがい・働きがい2以上1以上
合計14以上8以上

各区分の主な取組例

(1) 入職促進(4項目から2以上)

(2) 資質向上(4項目から2以上)

(3) 両立支援・多様な働き方(5項目から2以上)

(4) 腰痛・心身健康管理(4項目から2以上)

(5) 生産性向上(8項目から3以上、⑱必須)

(6) やりがい・働きがい(4項目から2以上)

見える化要件

📢 加算Ⅰ・Ⅱは公表必須
実施する取組を次のいずれかで公表する必要があります:
  • 自社ホームページへの掲載
  • 障害福祉サービス等情報公表システム(WAM NET)への掲載

8令和8年度特例要件(経過措置)

⚠️ 「令和8年度特例要件」は2つの意味で使われる
同じ言葉で呼ばれる別の要件があるので注意!

用途①:誓約パス(経過措置)

新規・規程整備中の事業所向け救済措置
キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳを「令和9年3月末までに整備します」と誓約すれば、申請時点から要件クリア扱いにしてもらえる仕組み。

誓約できる要件

用途②:上位区分(ロ)取得のための追加要件

🔴 加算Ⅰロ・Ⅱロを取るために追加で満たす要件
以下のア・イ・ウのいずれか基本給配分
選択肢 内容 対象サービス
生産性向上5項目以上(⑱㉑必須)を実施または誓約 全事業所
社会福祉連携推進法人に所属 法人連携対応
↑ いずれか + ↓
加算Ⅱロ相当額の1/2以上を基本給等の改善に充てる 必須

⚠️ 重要:①と②の関係

キャリアパス誓約を使うと、②のセットが必要になる
つまり、加算Ⅱイを取得していても、キャリアパス要件を「誓約」にした場合、追加で②の要件(生産性向上+Ⅱロ相当1/2基本給配分)を満たす必要があります。

9計画書の流れ(年間スケジュール)

年間タイムライン

4月1日〜15日 計画書(様式2)を指定権者に提出
※令和8年度は特例で、4月と6月の2回提出タイミングあり
4月〜翌年3月 加算算定・賃金改善実施
毎月の基本報酬に加算が上乗せ → 職員の賃金改善として配分
年度中 変更時は変更届(様式4)
定員・加算区分・配分方法の変更時は変更月の前月15日までに提出
翌年7月末まで 実績報告書(様式3)を提出
実際の加算受取額・賃金改善額・各要件の達成状況を報告

計画書の構成(様式2)

様式 内容
基本情報入力シート 法人名・事業所番号・報酬総額などを入力
様式2-1(総括表) 事業所全体の加算見込額・賃金改善計画・要件チェック
様式2-2(4・5月個票) 4〜5月の加算区分・キャリアパス要件の選択
様式2-3(6月以降個票) 6月以降の加算区分(イ・ロ含む)・キャリアパス要件

10実績報告と返還ルール

実績報告書で提出するもの

カテゴリ 書類
報告書本体 別紙様式3-1、3-2(実績報告書)
賃金関連 賃金台帳(全職員分)・給与明細・雇用契約書
規程類 就業規則・賃金規程・昇給規程
加算関連 国保連からの加算支払通知・加算配分一覧
職員周知 計画書の周知記録(議事録・通知書)
環境要件 職場環境等要件の各項目実施記録

返還ルールの全体像

✅ パターン1:賃金改善額が加算額を下回る場合
原則:一時金で不足分を補填すれば返還なし
年度末までに追加配分すれば要件達成扱い。これが最も一般的な対応。
⚠️ パターン2:キャリアパス要件の誓約未達成
返還対象になる可能性あり
ただし、翌年度も継続して誓約する場合は返還猶予の余地も。
🔴 パターン3:実績報告未提出・虚偽報告
全額返還+指定取消のリスク
これは絶対NG。期限内に正直に報告することが重要。

返還ゼロを達成する3つの防衛ライン

🥇 ライン1:計画通り実施

時給UP・手当・規程整備をすべて予定通り実施。理想的パターン。

🥈 ライン2:不足時は一時金補填

年度末に不足判明 → 一時金で埋める。これで返還回避可能。

🥉 ライン3:翌年度も誓約継続

真摯な取組継続をアピール。返還猶予の可能性を残す。

11よくある質問(FAQ)

Q1. 計画書の提出を忘れたらどうなる?

原則、当該年度の加算は算定できません。遅延提出でも救済される場合があるので、期限超過していても指定権者にすぐ相談を。

Q2. 年度途中で定員が増えたら?

変更届(様式4)を変更月の前月15日までに提出。計画書の数字も更新版に差し替え。

Q3. サビ管や管理者も加算対象?

令和8年6月改正で障害福祉従事者全般が対象に拡大。サビ管は対象。専従の管理者は対象外(兼務なら兼務分は対象)。

Q4. 全員均等に配分しないといけない?

いいえ、経験・技能のある職員に重点配分が推奨されます。事業所の判断で柔軟な配分が可能。

Q5. 賞与だけで配分してもいい?

NO。加算Ⅳ相当額の1/2以上は必ず「基本給 or 毎月手当」でUP必須。残りは賞与でもOK。

Q6. 誓約した要件を年度内に整備できなかったら?

原則は加算返還対象。ただし翌年度も継続して誓約する場合は返還猶予の可能性あり。

Q7. キャリアパス要件Ⅳの460万円配置は必須?

NO。「職場環境等要件14項目以上」で代替可能。小規模事業所の例外措置もあり。

Q8. Ⅱイとずっと取得する予定だが、Ⅰイに上げたい場合は?

キャリアパス要件Ⅴ(特定事業所加算Ⅰ・Ⅱの取得)が必要。要件整備して翌年度の計画書で区分変更を申請。

Q9. 新規開業の場合の「前年度賃金水準」は?

開業時に事業所が設定した「標準賃金水準」からの改善額をカウント。または、加算取得前の賃金水準をベースとする。

Q10. 加算額はいつもらえる?

国保連請求 → 国保連から事業所に加算分も含めて毎月入金。サービス提供月の2ヶ月後が目安。